解読文
原文
送り一札之事/一 百姓銀次郎娘とよ弐拾壱才
右之もの儀、坂井村伝七殿媒人を以、同村友次郎殿女房二差遣し処実証也、然上者当村人別相除キ、其御村方宗門御帳面二御書始可被成候、尤銀次郎御法度宗門二者決而無御座候、依而送り一札差出申当如件
嘉永二年酉四月日/牛奥大四郎知行所 武州男衾郡西古里村 名主・為一郎㊞/板井村 御役人中
>>読み下し文
現代語訳
送り一札の事(戸籍を送り移します)/当村の百姓・銀次郎の娘とよ二一才は、板井村・伝七殿の仲人(なこうど)により、坂井村・友次郎殿の女房として嫁入りすることに間違いありません。
然る上は当村の戸籍(宗門人別帳)から除いたので、御村方の戸籍(宗門人別帳)にお書き加えください。もっとも銀次郎は、禁制の宗派(キリシタン)では決してありません。よって送り一札差し出ますところ上記の通りです。
嘉永(江戸後期)二年酉四月/牛奥大四郎知行所 武州男衾郡西古里村(埼玉県大里郡寄居町)名主為一郎㊞より/板井村(相給村/埼玉県熊谷市) 御役人の方々へ
解説
送り一札とは
送り一札(おくりいっさつ)とは、人別送り状(にんべつおくりじょう)あるいは村送手形ともいって、住民が嫁入りとか入り婿・年季奉公など籍を他所に移住する際、村役人が移転先へ発給した送籍状です。
宗門帳とは
宗門御帳面とは、宗門人別帳ともいい、キリシタン信徒を摘発するために作成された帳簿です。家族の名前や年齢、所持高、婚姻・雇用の年月日、家畜などが記され、戸籍簿の機能を持っていました。
嫁入りの場合の書式
史料は人別送り状の典型で、嫁入りの場合、書式は概ね以下通りです。
- 表題(人別送り状、送り一札之事など)
- 自分の村の娘が○○の仲人により、あなたの村の者と結婚します。
- 自分の村の宗門人別帳からは抜きましたので、あなたの村の宗門人別帳に加えてください。
- この娘の実家(親)はご法度の宗派(キリシタン)ではありません。
- 日付/差出人・名主の名前/宛名・移転先村の名主の名前
読み下し文
送り一札の事/一 百姓銀次郎娘とよ弐拾壱才
右のもの儀、坂井村伝七殿媒人をもって、同村友次郎殿女房に差遣しところ実証なり、しかるうえは当村人別(にんべつ)相除き、その御村方宗門御帳面にお書き始めなさるべくそうろう、もっとも銀次郎御法度宗門には、決してごさなくそうろう、よって送り一札差出し申し当てくだんのごとし(以下解読文に同じ)
史料情報
- 表題:送り一札之事(銀次郎娘とよ)
- 埼玉県立文書館所蔵 飯島家700
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