解読文および解説
第九図
○御前橘(ゴゼンタチバナ)
ミズキ科の常緑多年草。アジア北東部~北米の高山の林下に生え、日本でも見られる。対生した葉が六枚が輪生状に集まる。名は、最初に発見された地名(白山 御前ヶ峰)と果実の付き方が橘に似ていることに由る。
- 四葩之白苞四出之小白花ヲ積ス:四葩(はな)の白苞(ほう,花の基部につく葉)は、四出の小白花(左図)を載せる/跋加
- 一小白花、卵巣
○禾本(ガラス/ホンドスガラス)
かほん、grass。イネ科の植物をさす。花は小穂と呼ばれる独特な構造で、小穂自体が小さな花の集まり。小穂は包穎、外花穎、内花穎などがあり、内花穎に包まれて雄しべ雌しべがある。「禾本諸草は花弁無し、唯或は内外の二穎(カフ)有りて、花頭(リン)と為す。(植学啓原巻之二、四)」
- 髯蕊茆如:髯蕊、茆(ボウ/茅)の如し
- 甲:内外穎、乙:鬚蕊(しべ)、丙:心蕊、丁:卵巣
第十図
○鴨跡草(コムメリナ)
露草(ツユクサ)また月草、鴨跖草(つきくさ)。ツユクサ科の一年草。花弁は三枚あり、上の二枚は藍色で大きく、下部の一枚は白くて小さくて目立たない。「其形、蛤殻の如し(前書巻之二、四)」
- 蜜槽小花如:蜜槽(みつそう)小花の如し/心蕊、髭心蕊、苞/実、心蕊
○単繖花(エンケルデ) ○複繖花(サーメンゲステルデ)
繖(サン)は散に通用。枝につく花の配列状態を花序(かじょ)といい、散形および複散形花序を示す。
- 総繖萼、総繖花梗(かこう,花の柄)、各繖萼、各繖花梗
史料情報
- 表題:植学啓原 3巻合綴
- 年代:天保5(1834)/宇田川榕庵著、菩薩樓蔵版
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3954
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植学啓原
1.宇田川榕庵 著 2.根や球根 3.根の断面、シダ 4.コケやキノコ