解読文および解説
第十一図
○午時花(ペンタペテス)
ゴジカ、Pentapetes。熱帯アジア原産の多年草。名は午の刻(午前11時~午後1時の2時間)に花が開くところから。
○金合歓(インガ)
キンゴウカン。アカシア、ミモザとも。マメ科の一属。オーストラリアおよびアフリカを中心に数百種知られる。日本では関東以西の暖地で初夏に花木として栽培される。無数の黄色の小花を球状につける。
- 一小花、子状、無数小黄花球為(無数の小黄花は球を為す)
- 顕微鏡以テ一小花ヲ観ル、葯、萼、鬚
○朱槿(ブツウケ/ヒビスキュス)
ハイビスカス。漢名「扶桑」に「華」をつけて日本名で扶桑華(ブッソウゲ)。葵科常緑小低木。中国南部原産。日本でも夏季は戸外でよく育つ。花弁五枚、普通赤色で、白色、黄色などもあり。
- 柱頭(ちゅうとう)、鬚蕊、花頭、萼、林氏第十六綱諸花大概此如(かくのごとし)
第十二図
山椒(ファガラ)、林氏第二十二雌雄花株異ノ開
さんしょう。古称は薑(はじかみ)。古来より胡椒など果実の辛いものに「椒」の名あり。ミカン科の落葉低木。東アジア(日本、朝鮮半島、中国)に自生。葉は五~九枚の小葉をもつ羽状複葉で、独特の芳香がある。
春、葉腋(ようえき,葉の付け根)から短い複総状花序を出し、多数の黄緑色の小鼻をつける。果実を干したものを薬用、香辛料とする。
- 雄花、羊歯(シダ)葉、顕微鏡ヲ以テ両性花ヲ観ル、雌花
一葉(ハラン)、雄雌花於地中ニ開ク
葉蘭。琉球で一葉という。葉の特に大きい蘭のような植物。中国原産のユリ科の常緑多年草。日本でも古くから観賞用として栽培。長い地下茎をはわせ、大きな葉を多数つける。春、筒状釣鐘形で紫褐色を帯びた、やや肉質の花を地面に接してつける。種子は古来から肺病、肋膜、一般強壮剤など薬用とされる。
- 弁剖(さい)テ鬚蕊ヲ観ル。辨は弁の旧字。
- 葉柄□剪ル、苞(ほう,花の基部につく葉)、芽
- 弁去テ而心蕊ヲ観ル(花弁を去って心蕊を観る)、柱頭上面、柱頭下面、柱頭・柱・苞
参考文献
居初庫太『花の歳時記 カラー版』(淡交社、1986)
史料情報
- 表題:植学啓原 3巻合綴
- 年代:天保5(1834)/宇田川榕庵著、菩薩樓蔵版
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3954
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植学啓原
1.宇田川榕庵 著 2.根や球根 3.根の断面、シダ 4.コケやキノコ