異体字とは
概要
何をもって異体字というのか、これには様々な意見があり、明確な定義づけは今のところ確定していません。
然しながら一般に異体字とは、常用漢字とは異なるけど意味・発音が同じで通用する漢字を言います。「対」「群」に対して「對」「羣」などがあります。以下にもっと砕けた解説。
高島俊男(中国文学)曰く「今は機械で字を打つから猫も杓子も同じ字になるが、以前手で書いていたころは、人によって無数の異体字があったものです。今回は、そのうち活字で出せるものについてのお話、ということになります。異体字とは、「見た目はちょっとちがうけど同じ字」ということです。」[文献]
旧字との違い
旧字とは、常用漢字のもとの字で「沢」「竜」に対する「澤」「龍」などを言います。
戦後に生まれた常用漢字は一般に、旧字の字画を減らした漢字。わざわざ見っともない字体を作ってしまったがゆえに、余計ややこしくなっています。
このような事情等により異体字と旧字の区(區)別はきほん、プロでないとできません。どうしても知りたい場合は、その都度『漢和辞典』を引いてください。一般には、異体字の中に旧字が含まれると考えて問題ないでしょう。上図を見ていただければ、だいたいイメージつかめると思います。
例えば常用漢字「会」は、旧字が「會」、略字が「㑹」。「会」には他にも俗字やら古字といったたくさんの文字が存在しますが、そういうの全部ひっくるめて常用漢字に対(對)して一般に異体字と言っています。
詳細
さて、常用漢字「会」は「會」の「略字」。つまり視点を変えれば、常用漢字にも旧字や略字、俗字が存在するということになります。
つまり自分は「常用漢字から見て」異(异)体字とか旧(舊)字とか言っているのか、「旧字から見て」略(畧)字とか常用漢字とか言っているのか、が重要になってきます。
則ち常用漢字、異体字、旧字等の関係は客観ではなく、あくまで主観――自分の視点(點)がどこから何を見ようと(あるいは語ろうと)しているのかを強く意識しなければ、わけがわからなくなります。
ここではあくまで「常用漢字から見て」異体字(旧字、略体、俗字)かどうかをお話しています。
けだし専門家でない限り「旧字から見て」漢字を語る人はきほんいませんので、とりあえず上の図(圖)のイメージを押さえておけばまず問題ないでしょう。
参考文献
高島俊男『漢字と日本(講談社現代新書)』(講談社、2016年)「異体字の話」262頁