解読文
(<<前頁一昼夜を二十)四時に分(わか)ち。一時を六十分。一分を六十秒(セコンド)にわかち。故に分時(ミ二ユート)は日本一時の百廿分一にて。秒時(セコンド)は日本一時の七千二百分一。則ち一昼夜(チウヤ)の八万六千四百分一ナリ。大抵(タイテイ)脈(ミヤク)の一動(ドウ)に同じ。
然れば今の時計の精密(セイミツ)なる事。一昼夜の八万六千四百分一まで。測(はか)るに差(タガ)はざる事。亦奇妙(キメウ)の至ならずや。
西洋人の常に(ツネ)用ゆるは。袖時計(ソデトケイ)一名根附時計なり。三本針(ハリ)を常とす。稀(マレ)には二本針の品。亦は一分飛(トビ)。重針(カサネハリ)。龍頭巻(リウヅマキ)。左リ巻等の品あれども。先は右巻三本針多し。故に其形ちを図(ヅ)に顕(アラハ)して知らしむ。余は
現代語訳
(一昼夜を二十)四時に分(わか)ち一時を六十分、一分を六十秒(セコンド)にわかち、故に分時(ミニット)は日本一時(不定時法・和時計二時間)の百二十分一で、秒時(セコンド)は日本一時の七千二百分一。則ち一昼夜の八万六千四百分一。大抵(身体の)脈(みゃく)の一動に同じである。
然れば、今の時計の精密な事は、一昼夜の八万六千四百分一まで測かるのに間違いなく、これまた奇妙の至りではないか。
西洋人の常に用いるのは、袖時計(そでどけい)またの名を根付時計(懐中時計)だ。三本針(はり)を常とするが、稀に二本針、または一分飛び、重針(かさねはり)、竜頭巻(りゅうずまき/懐中時計や腕時計の頭にあるつまみ)左り巻などの品がある。
然れども、ともかく右巻三本針が多い。故にその形ちを図に顕して知らせる。余りは
解説
史料は漢字と変体仮名で書かれ、脈を脉、奇を竒、図は圖、余は餘として異体字(旧字)で記しています。
内容について「分時(ミユート)は日本一時(不定時法・和時計二時間)の百二十分一で…」と細かく計算。現代の私たちからすると、却ってわかりづらく感じます。その理由は、江戸時代の時刻は十二時と六時の間は六等分ではなく十二等分あったことによります。
また西洋人は常に、袖時計(根付・懐中時計)を用いるとし、右巻三本針だが稀に二本針また左巻もあると紹介。現代もまた懐中時計を見る機会も少なくなり、勉強になります?
補註
史料情報
- 表題:西洋時計便覧
- 年代:明治二年(1869)/柳河春三著、柳河氏采英書屋刻・東京 宝集堂発兌
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3335
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西洋時計便覧
4.懐中時計 表面 5.開図 6.調整 7.刻み方 8.見方
9.図解 時計の読み方 10.不定時法対応表