解説
時代背景
質地とは、借金を担保として質入れした土地のこと。
江戸時代は無年季的質地請戻し(むねんきてき-しっちうけもどし)慣行といって、期限が過ぎても請戻しせず質流れになった土地でも、それから何年経過しようが元金を返済すれば請け戻せるという慣行が広く存在していました。
中小の百姓は経営が不安定だったので、土地を質に入れ借金をする必要に迫られることがよくありました。また期限内に借金を返済できない場合もよくありました。土地を質に取って金を貸す方は困ってしまいますが、無年季的質地請戻し慣行は、中小の百姓を保護する役割が大きいものでした。
これには村の土地は村のものであり、個々の百姓の土地所有権は村によって保証・規制されていたという事情がありました。そもそも年貢というのは、個々の百姓に課せられるのではなく、村全体に課せられるので、好き勝手に田畑を売買、ましては他村に譲り渡すなどはあってはならないことです。
田畑の所有の移動は、当然年貢収納に直接関係するため、質地証文には名主の確認と保証が必要とされました。
質地証文の書式
- 表題(質地証文之事など)
- 差出人が質に入れる田畑の面積、所在。
- 上記田畑を質に入れて借り入れた金額。
- 本文:a 質入れの理由(年貢の未進など)/b 質入れ期間/c 借入金返済時の約束/d 年貢諸役を果たすようお願い/e 連帯保証人(加判人)の責任保障
- 年月日
- 差出人・畑を質に入れる人:地主、名主、五人組等保証人の連判
- 宛名・お金を貸した人
以上、時代背景と質地証文の書式を頭に入れて再度解読に挑戦してみると、だいぶ解読しやすくなるかと思います。然しながら古文書初学者には難しいと思いますので、すっ飛ばしてもいいです。
参考資料
- 渡辺尚志『百姓たちの江戸時代』(筑摩書房、2009年)「第三章 働く百姓たち」99-105頁
- 北原進『独習 江戸時代の古文書』(雄山閣、2002年)
史料情報
- 表題:質地証文之事(下畑・荒山、壱反壱畝十五歩)
- 年代:天保11庚子.11./出所:名主源兵衛外1名/宛所:たよ
- 埼玉県立文書館所蔵 飯島家397
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