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証文・手形

江戸時代の納税誓約書「年貢定免請状」

史料

年貢定免請状

※無断転載禁止

解読文

原文

差上申御定免御請証文之事

御知行所武州男衾郡板井村、御取箇之儀、田方御米五石六斗、畑永七貫五百九拾五文弐分八りん

右之通り当酉年来ル丑年迄五ヶ年季御定免奉願上候処、願之通被 仰付難有仕合奉存候、然上者、年季之内何様之日損水損有之候とも、三歩迄之損毛者御引方御願申間敷候、三歩余之損毛有之候ハヽ、奉請御見ぶん御取箇被 仰付次第御上納可仕候、依而御定免御請証文奉差上候処、依而如件

御知行所武州男衾郡板井村 名主 平重郎、組頭 源七、百姓代 寅之助/万延二酉年/正月日/長塩隼人様御内/伊東肇殿

>>読み下し文

現代語訳

定免(じょうめん:一定期間、定額の年貢を納める)誓約書を差し上げます。

知行所・武州男衾郡板井村(熊谷市)の年貢額について、お米は五六斗、畑は五百九拾五文弐歩八厘。右の通り、当年より来る丑年まで五ヶ年間、定額の年貢を納めることをお願い申し上げましたところ、聞き届けられて感謝申し上げます。

このうえは、期間内にどのような日照りや水害がありましても、三(約10㎡)までの損害はご減免のお願いはいたしません。三歩余の損害がありましたならば、お取り調べを受けたうえで年貢を仰せ付けていただければ、順次御上納いたします。したがって御定免の御誓約書を差し上げますところ、この通りです。

御知行所・武州男衾郡板井村 名主 平重郎、組頭 源七、百姓代 寅之助より/万延(1860)二年一月日/(旗本)長塩隼人様御内 伊東肇殿へ

解説

検見法と定免法

毎年の年貢は、村単位で割り付けられます。の年貢額を決める検地には検見法と定免法があります。詳しくはリンク先をご参照ください。

江戸中期ごろから一般的になった定免法の場合、史料のように「一定期間の」年貢の割付額を示した年貢定免請状を村役人が役人(旗本)宛てに提出します。納付する方が書くって、妙な気もしますが。

用語

  • 本文一行目 取箇(とりか):年貢のこと。
  • 五行目 日損(にっそん):日照りによる農作物の損害。
  • 六行目 損毛(そんもう):自然災害で農作物が被害を受けること。
  • 同行 引方(ひきかた):年貢の減免。

特に難しいくずし字はありませんが、江戸時代の政治のあり方とか、言葉の意味がわからないと難しいです。

読み下し文

差上げ申す御定免(じょうめん)御請証文(うけしょうもん)の事

御知行所・武州男衾(おぶすま)郡板井村、御取箇(とりか)の儀、田方(たかた)御米五石六斗、畑永(えい)七貫五百九拾五文弐分八りん

右の通り当酉年より来る丑年まで五ヶ年季(ねんき)御定免願上げ奉りそうろうところ、願の通り仰付けられ有難き仕合せに存じ奉り候

しかるうえは、年季の内いかようの日損(にっそん)水損(すいそん)これ有りそうろうとも、三歩までの損毛(そんもん)は、御引方(ひきかた)御願い申すまじく候、三歩余の損毛これ有りそうらわば、請御見ぶん請け奉り御取箇仰付けられ、次第御上納仕るべく候

よって御定免御請証文差上げ奉りそうろうところ、よってくだんのごとし(以下解読文に同じ)

史料情報

  • 表題:差上申御定免御請証之事
  • 埼玉県立文書館所蔵 飯島家448
  • 当サイトは同館から掲載許可を頂いてます。
  • ※無断転載を禁止します。

証文・手形など

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